大判例

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大阪地方裁判所 昭和47年(ワ)2502号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕右認定事実に照らし、大阪府知事が昭和三七年七月一日に原告に対しなした二八九番の土地の売渡処分の効力について考察するに、農地法三六条によれば、農地の売渡を受けるための要件は、対象土地が小作地であつて、その土地につき現に耕作を行つている者で自作農として農業に精進する見込みがある者(同条一項一号)、あるいは自作農として農業に精進する見込みがある者で農業委員会が適当と認めた者(同項三号)である。しかるに(イ)、二八九番の土地は、右売渡処分当時被告が自作地と信じて耕作していたものであつて、小作地ではなかつた。(ロ)、またこの土地は原告が耕作しているものではない。耕作者は、被告であり原告は、守口市で会社を経営していたものである。(ハ)原告は、農業に精進する見込みがある者ではない。すなわち同人は、昭和二三年頃から大阪市に居住し、農地を耕作したことはなく、さらに昭和二七年頃からは守口市で会社を経営しているものである。

そうすると前記売渡処分には右の如き売渡処分の要件をまつたく欠如した瑕疵があり、この瑕疵は重大であるというべきであるのみならず、右(イ)ないし(ハ)の事実の如きは現地を一見すれば容易に判明することであるが、些少の調査をなせば探知し得ることであるから、明白であるともいうべきである。特に前記売渡処分は終戦直後大量の農地を一挙に買収、売渡処分をなさざるを得なかつた、いわゆる農地改革時代になされたものではなく、調査決定に比較的時間的余裕があると見られる昭和三七年七月当時になされたという事実を加味すれば、一層然りということができよう。

すなわち右売渡処分は、重大且つ明白な瑕疵のある違法の行政処分であつて、行政庁の取消を待たず当然無効であると解すべきであり、従つてまた、原告は、右売渡処分により二八九番の土地の所有権を取消し得なかつた筋合である。よつて原告の被告に対する、原告が二八九番の土地の所有権を有することを前提とする同土地への立入りの禁止の請求は理由がないこととなる。次に原告の被告に対する、原告が二九〇番の土地につき占有権を有することの確認を求める請求についてみるに、右認定のとおり被告は、原告は二九〇番の土地の売渡処分を受けたと考えていて原告らがこの土地を耕作するのを妨害したり異議を述べたりしたことはないのである。そうだとするとこの請求については確認の利益がないこととなり、却下すべきこととなる。

三 次に被告の反訴請求について検討することとする。しかるところ被告は、その請求原因としてまず、李岡海において二九〇番の土地の売渡処分を受けているが、これは二八九番の土地についての売渡処分と解すべきであり、従つて同人はこの二八九番の土地を所有したものであり、被告は同人の相続人たる李東勲からこの土地を買受けて所有するに至つたものであると主張する。なるほど前証認定のとおり李岡海において二八九番の土地の売渡を受くべきところ関係者の錯誤によつて二九〇番の土地の売渡がなされた事実が認められる。しかし行政処分は行政庁の内心の意思如何にかかわらず、その表示に従つて成立するものであるから、李岡海に対する売渡処分が二八九番の土地につきなされたとは解することはできない。また私的自治のもとでの私法行為について以上に、法適合性、公定法の要求される行政行為にあつては、その表示に反してまで瑕疵の治ゆを認めることは慎重でなければならず、本件にあつてはこの原則に反してまで被告の主張するように解すべき特段の理由はなく、被告の右主張を認めることはできない。

(野田栄一 増田定義 周部崇明)

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